■「お煎茶はあなたの心を運ぶラブレター」■

 日常茶飯事という言葉があります。古来より我々日本人とお茶は切っても切れない関係です。我々日本人がお茶を飲むというときに、ただ単にのどを潤したり、水文補給のためと割り切って飲む人はいません。ひと時の安らぎの時間であったり、友との語らいの時に飲むものでした。

 家庭に目を移せば、おやつの時間、夕べの団欒の時には欠かせないものでしょう。
朝起きて、すぐ飲む熱いお茶は、目を覚ましやる気を与えてくれます。中国よりお茶が伝わって以来、お茶のもつ薬用効果と、その効果がもたらす精神的効用と結びつき、茶道として、煎茶道として日本独自の喫茶文化を発展させてきました。

 さて、古来よりお茶は、高貴なる飲み物として、また薬用として大変貴重なものとして大切にされてきました。ところが、近年においてお煎茶が普及すると共にその価値を考えることなく飲用されています。日本茶が多くの人に楽しんでいただけるのはうれしい事なのですが、もう一度この素晴らしい飲み物の価値を見直していただけたら、と思っています。
 O-157の事件で一躍クローズアップされた「カテキン」という成分、最近では健康ブームに乗ってポリフェノールという言葉と共にすっかり有名になりました。「テアニン」は、アミノ酸の旨味成分です。
 また、UMAMIという言葉は英語にもなりました。その他にも、カフェイン、フラボノイド、フッ素、各種ビタミン類を多く含みそれらが複雑に絡み合う味は、何ともいえません。そして、科学では証明することのできない心の味に繋がっていきます。

 煎茶の心を一言で言いあらわすならば、「和敬清風」。煎茶の世界観を表すならば、「清風清雅」となります。こころに清らかな風を吹かすことの出来る飲み物、それが煎茶なのです。そして、甘み、苦み、渋みの程よい調和はまさに人生の味といえるでしょう。そのお茶を煎れてくれた人の心の味といってもいいと思います。楽しい時には楽しさが、悲しい時には悲しさがお茶の味には染み込んで行きます。相手に自分の思いを伝える時人は言葉を使います。でも、言葉ではうまく伝えられないけれども、つたえたい気持ちが誰にでもあると思います。

 その何かを伝えてくれるのが、一煎のお煎茶なんです。お煎茶は私にとってラブレターなんです。だから、愛情一杯のお茶を淹れてください。大切に扱ってください。同じお茶の葉を使ったとしても、ほんの一寸の工夫でお茶の味は激変します。
 でも本当に美味しいお茶とは、この人とお茶が飲みたい。この人にお茶を差し上げたいと思う人と飲むお茶です。そんな人になるべく努力を積んでゆくのが、お茶の道です。大小様々なお道具を通じてその様式、技法、歴史にいたるまで学び、そして床の間の掛物、書画、文人たちの境地に思いをはせ、先人たちの思想をより深く理解していきます。

 かの剣豪宮本武蔵は、「剣禅一致」といったそうです。剣の道を極めることは、人としての道を極めなくしてありえないといった意味でしょうか。お茶の世界には、「茶禅一味」という言葉があります。禅とは日々の精進の賜物であって、決して一日では成し遂げられないものであると、そしてお茶の世界も同じですなぁと、一休禅師の言葉です。

■日々是精進、継続は力なりといいますが、どんな世界であっても同じですね。

■日本茶はお米と同じように毎日飲み続けても飽きない、我々日本人にとっては究極の飲み物です。その上、健康にもよい。こんなにも素晴らしいお茶を美味しく楽しんでいただくのに必要なことは、少しの工夫と愛情です。

たまにはラブレターを書くつもりで、丁寧にお茶を煎れてみてください!
                                
煎茶道松月流 家元 渡辺宗敬 
「愛と勇気の煎茶道」
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