■「愛と勇気の煎茶道」■

明けましておめでとうございます。お茶に恋して一煎入魂の心意気でございます。本年も宜しくお願い致します。 　私にとって煎茶とは、生きる喜び、探求する喜び、自分を磨く楽しみ、そしてお茶席では、こころと心が触れ合う感動のドラマが待っています。この素晴らしさを多くの人と分かち合う事が、私の生きる道、煎茶道と考えております。 　古来よりお茶は単に飲むものではなく、茶を通じて人の心、精神の向上をはかるものとして、和の心、温かな気持ちを育むひと時として楽しまれてきました。【茶の心】は日本人の豊かな感性を形成する世界に誇れる文化遺産です。日本人にとって煎茶は、のどを潤すと同時に、心の渇きを癒してくれる特別な飲み物なのです。 　嬉しい時、悲しい時、いつの時も煎茶は私達のそばにいます。そして、一煎のお茶は「愛と勇気」を与えてくれます。愛とは即ち優しさです。勇気とは是生きる力、然るに強さです。人生、山あり谷あり、険しい道を歩んで行かなければなりません。 　現代を生きる我々にとっては、合理化、機械化、簡略化と便利なようですが、時代の速さに益々人間が追いつけない時代です。更に、パソコン、インターネット、携帯電話の普及は、本来コミュニケーションツールである物が、人間同士の結びつきを疎遠なものへと拍車を掛けようとしています。犯罪も多様化、凶悪化してきました。捕らえ所のない恐怖に皆が怯えています。大勢の人が心に大きな穴が空いたまま暮しています。街に物が溢れ、情報が垂れ流される中、人々の優しさは影をひそめ様としています。 　いつの時代に於いても必要なのは、ヒトと人との結びつき、【和の心】です。お茶の味は、この優しい気持ちを思い起こさせてくれます。立ち昇る茶煙は、強さを呼び覚まします。 　「愛と勇気」の煎茶一煎、小さな幸せに見えますが、小さな幸せこそが生きる喜びです。

平成十八年新春　　　　　　　　　　　　　　　 煎茶道松月流　家元　渡辺宗敬

「お煎茶はあなたの心を運ぶラブレター」